恋と旧懐~兎な彼と私~
「愛深,すき。付き合って,欲しい」
振り向くなり,突然そんなことを言う暁くんを前に,私は分かりやすく固まる。
「え……? 今,なんて……」
「愛深が,好きだよ。だから……付き合って」
「……はい」
気の迷いとか,勘違いとか,そんなこと考えるよりも先に,言葉がついて出た。
「丸く収まって良かった」
私は未だ実感のわかないまま,いつかと同じ場所に暁くんと2人,腰を下ろす。
「ふふっやっぱりやさしいね」
それって,私の気持ちを考えてくれたんでしょう? 慧とのこととか。
「それはそれとして」
ーごしごし
「……いまここにしたら慧と間接キスしたことになる? うざっ。すっごい腹立つ」
私のおでこを嫌そうに擦る暁くん。
珍しくちょっと痛い。
ーちゅ
「ふぇっ?!」
じわじわと広がる目。
「せめてここは誰にも許しちゃダメだから。体育ん時,慧が愛深のところに走っていった時も,まじで焦ったし」
私はこの時初めて,自分が思っているよりも暁くんに好かれていることを知った。