恋と旧懐~兎な彼と私~
暁くんはゆっくりと考える動作をとる。



「ふふっ」



真面目に考えるその様子が,なんだかすごく嬉しかった。

それはね?



「それは,暁くんを好きになっちゃったから」



伊希に向ける好意なんて,足元にも及ばない。

あの日の涙は,幼く拙い独占欲だ。



「も,いいよ。十分わかったから。ほら,帰ろ? 俺のせいで遅くなっちゃったから,送ってあげる」



私は立ち上がった暁くんをぱっと見上げた。



「送るって?」

「…家の近くまで」

「私の駅暁くんとこの1駅先にあるんだよ?」

「ごちゃごちゃ言わないで……それともやなの?」

「まさか!」



そんなはずない。

力む私に行くよと笑う暁くん。

このときめきは,どうしたらいい?
< 67 / 161 >

この作品をシェア

pagetop