恋と旧懐~兎な彼と私~
即答されて,私は人知れず安堵のため息をはいたのを覚えてる。



『それなら良いけど……よく笑って喋る子がタイプなのかな』

『さー? でも,愛深みたいなのはないな』

『は?』



久々にイラッとした瞬間だった。

自分でその話題にしたくせに気のない返事するし。

私はこの夜に気付いたのだ。

伊希は,変わったんじゃなくて元々こういう話も普通にする,普通の男の子だったんだって。



「はぁ……伊希,ねぇ…」


話してて,思い出すあいつ。



「なに?」

「あのね,私,実を言うと伊希が初恋かもしれないって思ったことあるよ。大きすぎる衝撃の反動で。言っても2週間で勘違いは払拭できたけど」

「なんの話?」

「でも勘違いだっていう裏付けが出来たのは高校に入ってから。悪魔の証明みたいなものだよ。してない証明は,自分でも出来ない」



だけど,出来たの。



「なんで,出来ない証明が,出来たと思う?」
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