恋と旧懐~兎な彼と私~
だって,優しいね,なんて言ったら,暁くんは否定するでしょう?

優しいものは優しいの,暁くんにも否定なんてさせないよ。

私は,日々大事なものが消えていくのが怖かった。

新しいものがないよりも,元々あるものが無くなる方が嫌だった。

だけど,逆に何かを持っているのすらも怖くて,中学校を卒業することで,きっとすぐに皆が私を忘れてくれるだろうことに,ひどく安心していた。

在学中も,いつも皆の輪の中からひっそりとフェードアウトして,皆が見ている前じゃなくて,後ろに走り出したい気持ちでいた。

でも,もうそんなこと言っちゃいけないよね。

私が望んでいたことを実現させてしまったら,高校で出会えた暁くんたちを,いらないと否定することになっちゃうから。

暁くんを好きになってしまった私は,前を向かなきゃいけない。

過去ばかり引きずっていてはいけないのだ。
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