鬼弁護士は私を甘やかして離さない
夜になりようやく事務所も落ち着きを取り戻し始めた。

私は総合病院へ慌てて向かった。
調べたら面会時間ギリギリになりそうだった。

受付で名前を言い、病室へ案内されると中林さんはもうおらず、個室に恵介が酸素をつけ、何本もなくだが繋がっていた。
近づいたが恵介は寝ているようだった。

「恵介?」

小さな声で声をかけるが恵介は動かない。
顔が白く、今朝部屋を出た時とは変わってしまい疲労感が滲み出ていた。

「けいすけぇ……助かってよかった。私のそばにずっといてくれるって言ったじゃない。嘘つかないって言ったじゃない」

私は涙声になりながらベットにしがみついた。
声を殺しながら泣いていると頭を撫でられた。

「真衣……?」

「恵介?!」

「俺……」

「牧田さんの旦那さんに刺されたの。オペしたのよ。不幸中の幸いで臓器に損傷はないって聞いた。痛い?」

「そっか。裁判所を出たところで牧田さんに呼び止められ、掴みかかられたんだった」

「心配した……恵介がいなくなるんじゃないかって。どうしようって。ここに来るまで生きた心地しなかったんだから!」
 
私はそういうと恵介に抱きついた。

「イタタ。ごめん。真衣。俺は真衣を守らないといけないからいなくならない」

そういうと恵介は自由が利く片手で私の頭を撫でてくれた。

まだ薬が効いているのかウトウトしており、私は恵介を休ませてあげようと立ち上がった。
すると恵介が虚な声で私に声をかけた。
カバンにマンションのキーが入っているから、と。
それだけいうと眠ってしまった。
私は彼のカバンを開き、マンションの鍵を見つけると私のバッグの中にしまいこみ病院を後にした。
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