義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた



夜。ご飯も食べ終わって、お風呂も入り終わった後。


「…………」


意を決して買った露出度が高めのネグリジェを見に纏う。

が、駆くんの反応は私が予想していた反応と全く違って。


「……のんちゃん…背中…」


背中?前じゃなくて?胸元じゃなくて背中?

数回瞬きをして、顔を傾げると…。


「タグ。外し忘れてる。」

「あっ…!!!」


恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。


「うぅ……」


何も言葉にならず、ただただ落ち込む。
スタートダッシュを失敗したみたいな感じ。

あぁ、今日も上手くいかないや。

と、下を向いていると駆くんはハサミを持ってきてパチンとタグを切ってくれた。


「その深緑…可愛いね。大人っぽくてグッとくる。」


その言葉を聞いて期待を胸に顔を上げると、優しく笑いかけてくれる駆くんが目に映った。


「……ねぇ、これ見て何か思うことある…?」

「…あるよ。」

「どう思う?」

「可愛い」

「そう言うことじゃなくて」


言わなきゃ伝わらないって確かにそうだなって思う。だから私は…。






「………ムラムラしない!?」

「っ!?」

「………あ……」






うん。ド直球すぎた。

冷や汗が止まらない。

やっちゃった、という後悔ばかりが思考回路を汚染する。


「………あぁ…そう言いたかったんじゃなくて……」

「……するよ。」

「……え…?」

「するから…困る。……俺、脳内ではのんちゃんにやばいことばっかりしてるし。」

「やばいこと…?」

「うん。」


衝撃的な事実に喉が渇いて心臓が高鳴る。


(嬉しい…)


ただただ嬉しい。ニヤケそう。間抜けな顔をしてしまいそう。


「………していいよ。」

「いや、しない。」


即否定ですか。あぁ、そうですか。

嬉しいという感情が一気に怒りと悲しみに変わる。


「なんで?」


ムスッとした表情をして、視線を逸らす。


「……歯止めが効かなくなりそうだから…」

「………効かなくなれば良いじゃん。」

「最後までするよ…?俺、おかしくなりそうなくらい好きだし…。」

「最後までしよ!もう付き合ってかなり経つのに、何もしてもらえないの嫌だ!」

「っ…あのさ、せっかく大事にしようとしてるのにその言い草は…」

「…………駆くんのこと、好きすぎておかしくなりそうなのは私も一緒!それに…」


20歳になった。成人した。
それは駆くんも。


「……もう子供じゃない。」


ガッツいてるって思われるかな。気持ち悪くないかな。


でも、きっと…。


………私だけじゃないよね。



「…………あぁ…もう…。」

「?」

「………どんだけ我慢してきたと思ってんの…? 本当に知らないからね?」


駆くんともっと近い距離でいたい。

ただ、純粋に。


「……あと…俺、初めてだから…変な期待しないでよ?」

「してないよ。」

「……………目、閉じて。」


ただ、純粋に。


(駆くんのこと、大好きだな…)


目を閉じて待った。それから少しして…。


「ん…」


唇に柔らかな感触を感じた。





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