義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた

駆side



約束の金曜日。


仕事中、常にのんちゃんのことで頭がいっぱいだった。


「………」


ずっとずっと我慢してきた。大切にしてきたつもりだし、父さんとの『大学卒業まで手を出さないこと。なんなら結婚するまで手を出すな。』という約束を守りに守り抜いた。

ポッキリと心が折れて襲いかかりそうになった経験は山ほど…。


(今日…ついに…)


脳内でのんちゃんの見たこともない姿を想像する。


「……ぅわぁ…むりむり…」

「何が無理?」

「っ…なんでもないです…!」


上司に気持ち悪がられるような独り言を溢すくらいに、余裕はなかった。















仕事後、薬局に足を運んだ。仕事帰りで来る人が多い中で、精神状況は忙しなかった。


(………0.02…だよな…?薄いと怖いし…。12個入りと6個入り…。たくさん買って帰ったら何回やるんだって引かれそう。それは嫌だし…んー!0.03とかの方がいい…?)


いつかするかも、と思いながらずっと購入を躊躇っていた避妊具。

『情けない』『ヘタレ』という言葉が似つかわしい心境に自分自身、嘲笑いたくなる。


「………」


悩んでいても時間の無駄だ。
避妊具コーナーの前にずっといるのは黒歴史になること間違いない。1番無難そうなモノを買おう、と意を決して手を伸ばすと…。


「駆くん…?」

「!?」


声が聞こえた方を向くと、そこにはここで1番会いたくなかったのんちゃんの姿があった。


「き、奇遇…だね。何買いにきたの…?」

「シャンプー。駆くんは?」

「…………えっと…」


俺の前の棚を見る。それから数秒後、全てを理解したのんちゃんは顔を真っ赤にさせて一言だけ。


「っ…!コンディショナーも買おうかな…!」


うん、あんまり嬉しくない気の使われ方だ。


「また後で!駆くん!!」


………つくづく、俺は格好つかない人間だな。



< 37 / 46 >

この作品をシェア

pagetop