風雅堂異談
だらしなく、よだれまみれで鰹節をしゃぶっていた優の顔が引き締まる。


「いらっしゃい。お客様!」


音も無く玄関に入って来たのは、やはり麗子であった。


「使い魔の気配が消えたと思えば、お主の仕業か?おや、中身は違うね?お前も妖しの類かえ。」


「ふん、一緒にするんじゃないよ。どうやらお前も姿は借り物と見た。何故、川辺さんを狙う?」


「お前には関わりの無い事、すぐにこの場を立ち去れ。」


「そうもいかぬ。何せ鰹節貰ったしな。」


「猫又か?お前?立ち去らぬならこの場で散れ!」


そう言うと、今まで下を向いていた顔を上げカッっと目を見開き優を見る麗子。

「やはり、邪眼か?わしには効かんぞ!邪眼とやり合うのは…何十年振りかな?」


「うるさい!ならば物理的に死ね!」
懐より、包丁を取り出し襲いかかる麗子。


「やれやれ、短絡的だな。もっとこう…なんだ、術と術のインテリジェンス漂うだな…おっと、危ない!」
麗子の最初の一撃をかわすと、気による当て身を打つ優。
倒れる麗子。
その体から、白いもやが立ち上る。
やがて、白いもやは一つの形となる。
猫である。
しかしその猫、尻尾が2つ。
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