風雅堂異談
「四文字熟語並べなくてよろしい!川辺さん自身に覚え無いとすると…川辺さんの家系は、長生きですか?短命ですか?」


「言われたら、うちは男は短命だな。親父は42で亡くなったし、祖父は…42!…あっ!どうしょう!俺今年42だ!」


「ふ~ん、そうですか。やはり今夜中にけり付けましょう。」
そう言うと、優は家のあちこちに、御札を張り、特に奥の部屋に綱を張り、結界を作る。
『これでよし。人間は形が有れば安心するからな。』
優の姿をしたゆきが心の中で舌を出す。

「では、川辺さん今夜12時以降はこの部屋から出ないで下さい。奥様も一緒に。何があっても外に出ない、覗かない!良いですね。」


「わ、わかった。あんたは?」


「私は玄関でお客様をお迎えします。あっ、一つ用意して欲しい物があるんですが?」
何故か、顔赤らめる優。


「何ですか?」


「鰹節を一本…良いですか?」


間もなく時間は、日付を変えようとする。奥の部屋からは物音一つしない。
玄関の上がり口にドカッと座り、満面の笑みで鰹節にかじりつぃている優。
優の名誉の為に補足すれば、あくまで鰹節好きなのは、ゆきである。現在は優はゆきなのだ。

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