教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
(かわいい)

 そう思ってから、俺はさらにうろたえた。

(か、かわいい? かわいい、だと?)

 まさか自分がそんなボキャブラリーを持っていたとは思いもしなかった。

「あ……あ、あの、どうしてここへ?」

 やっとのことでまともに言葉が出た。愛想がないことは自覚しているが、動揺しているせいでさらに顔が強ばってしまう。

「俺に……服を届けに来てくれたんですか?」
「いえ、本日はお届けに上がったわけではございません」
「じゃ、何?」

 瞬間、桐島さんの顔から微笑が消えた。

(あ)

 しまったと思っても、もう遅い。

 俺は声が低いし、必要なことしか言わない上に、口調もかなり素っ気ない。さらに目つきもきつい。
 怒っていると思われて、怖がられることもよくあった。たぶん今の桐島さんもそうだろう。

 だが、彼女は怯まなかった。少し引きつってはいたが、再び笑顔を見せたのだ。

「東野様のホテルがお近くでしたので、今朝はお願いに上がりました」
「お願い……俺に?」
「はい!」

 桐島さんはどうやら俺を待っていてくれたらしい。今は八時半だが、いったいいつからここにいたのだろう?
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