教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
陶酔のローマ
「ねえ、アミ。リンって、もしかしてけっこういいところのお坊ちゃんなんじゃない?」

 パオラがそんなことを言い出したのは、昨晩のこと。夕食の後片づけが終わって、リビングでくつろいでいる時だ。

 林太郎さんはちょうどバスルームに行っていて、パオラは食後酒のレモンチェッロを、私は紅茶を飲んでいた。

「どうして?」
「だって食べ方がとてもきれいだもの。背筋もいつもまっすぐだしね。かなり強面だから、初めて会った時は正直ちょっと不安だったのに……なんだかすごく意外よ。まあ、たいしたハンサムだとは思ったけどね」
「パオラったら」

 実は私もそう思っていた。

 一緒にいると、ごく自然にドアを開けてくれたり、私をかばうように車道側を歩いてくれたりする。今日だって夕食の買い物をする時、頼まなくても荷物を持ってくれたのだ。

 林太郎さんとの同居はお見合いや結婚生活の練習をするために始めたことだが、実は相手への気遣いや基本的なマナーを教える必要は全然なかった。
 もちろん海外で暮らしているから、そういうことは自然に身に着いたのかもしれないけれど。

「とにかくリンはフィーコ(イケメン)よ。彼と結婚できる女性はものすごく幸せね。」

 パオラはそう言って、意味ありげに私を見つめた。
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