好みの彼に弱みを握られていますっ!
3.神様の塩対応
 4月の、よく晴れた第2月曜日。
 今日は私の、社会人デビューの日です。

 営業部門、設計管理部門、土木部門、建築部門、管工事部門、左官部門、経理部門などといった、いくつかの部門を有した、ここらではそこそこ有名な中規模の建設会社に採用されて、初めての出勤日。

 私は先日支給されたばかりの真新しい紺色の制服に身を包んで、ソワソワと落ち着かない気持ちで公衆の面前にいます。

 小さな会社だからかな。
 入社式なんて仰々(ぎょうぎょう)しいものはなくて、私を含めた新卒の新入社員4名、朝礼で100人あまりの先輩従業員らの前に立たされて……。
 今まさに社長直々にざっくばらんな感じで紹介されているところ。

 大企業の入社式みたいな派手さはないけれど、なまじっかアットホームな分、社長や会長など、いわゆるお偉いさんとの距離がイメージしていたよりずっと近い。

 そんな人たちから頑張ってね、と直に声をかけられたりするぐらいだから、朝礼でも先輩従業員の皆さんたちとの距離なんかはそれ以上に近くて。

 別にあがり症なわけではないけれど、壇上にたったの数名。注目されていると思うからか、やたらと恥ずかしかった。

 私は始終視線を足元や手元や社長の背中へと泳がせて、何とかその場をやり過ごそうと必死で。ほぼ前は見ていなかった。
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