私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
「はー……かっこいい。
実は埋木くん、烈華様の次に好きなんですよね」

「わかる。私も、結構好き」

「そういえば、深月さんの小説、結構埋木くん出てきますもんね」

「言われてみれば……無意識に登場させてたかも」


埋木くんは、烈華様のライバルっていう設定があるから、つい登場させたくなってしまう。


「前回の長編……『焔は消えず、されど縁(えにし)は灰と散る』でも、おいしい役どころでしたもんねぇ。

ちょっとわかります。埋木くんって、ポツリと喋った言葉にすごい力があるっていうか、影響力強いですよね」

「あはは、確かに。だから人気高いのかも」

「ま、私たちは烈華様一筋ですけどね!
公式の人気投票では負けても、愛の大きさじゃ負けません!」

「でも、自分の好きなキャラが順位低いのも嫌だけど、高いとそれはそれで複雑だよね。
ライバルの多さにびっくりするっていうか」


こうやって、心置きなく『エレアル』話ができるのも、コラボカフェならではだ。

普通のカフェじゃ、周りの目が気になって、なかなかこうはいかない。

周りのお客さんたちも、私たち同様、『エレアル』トークに花を咲かせているようだった。

……ただ一組、私たちの隣の席の子達を除いて。

女の子2人は、なぜかずっと黙ってスマホをいじっている。

ううん……やっぱり、あんまり楽しそうじゃないなぁ。

なんとか『エレアル』の魅力を伝えたい、なんて、お節介にも程があるよね。
どう過ごそうが、その人の勝手だし。


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