私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
「ほ、宝城先輩……?」

先輩の静かな怒りに、陽菜も驚いたように言葉を失った。

逆に先輩は勢いを取り戻し、会話を自分のペースに持っていく。


「大体、言いがかりなんかじゃないわよ。
光峰が《ヤミノツキ》だってのは、本当なんだから」

「……仮にそうだとして、どうして先輩が、そんなこと知ってるんですか?」

「私の後輩たちが聞いたのよ」


宝城先輩はふんぞりかえると、滔々と説明した。


「私、ちょっと前、後輩連れて名古屋で買い物してたときに見たのよ。
光峰が、中学生くらいの女の子と2人で、怪しいカフェに入っていくところ。
アニメのイラストがたくさん描いてある、いかにもオタクって感じのカフェにね」


私はハッとした。

真昼ちゃんと行った、『エレアル』コラボカフェのことだ。


< 144 / 165 >

この作品をシェア

pagetop