私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
優星くんは優しいし、一緒にいて楽しい。

優星くんとなら、きっと毎日楽しく過ごせる。

でも。


「……私は、やっぱり、烈華様が好き」


二次元でも。

この世に存在しなくとも。

物語の中で死んでしまっても。

話したり触れたり一生できなくても。

それでも、

────私が恋するのは、烈華様だった。


「……深月」

「わかってる」


こんな理由で告白を断るなんてありえない。

優星くんのことだって、人間としてすごく好きで、きっと男の子としても、好意を持っている。

なのに、『キャラクターの方が好きだから』って断るなんて、宝城先輩の言う通り、《イタいオタク》そのものだ。

でも。


「……私、自分の気持ちに、嘘はつきたくない」


初めて烈華様を目にした時に感じた、あのときめき。

何度も何度も漫画を読み返して、たくさん小説を書いた5年間。

死んでしまった時に感じた強いショック。


こんなに紛れもなく恋しているのに、それから目を逸らして他の男の子と付き合うなんて、私にはできなかった。



「……ごめんなさい」

「……そっかぁ」


もう一度謝ると、優星くんは、へらっと気の抜けた笑みを見せた。


「そうだよな。勝てないよな……うん、知ってた。
深月がどれだけ焔烈華を好きか。

……俺、深月と出会ってから、悪いと思いつつ、深月の小説全部読んだんだ。
深月がどんな小説を書くのか、気になって。

驚いたよ。
深月が焔烈華のことめちゃくちゃ好きなんだって、嫌ってほど伝わってきて、悔しかった。
ライバル強力すぎるだろ、ってさ」

「……引かなかったの?」

「引かないよ。むしろ尊敬した。
俺、深月のこと大好きだけど、あんな風に愛情を表現することなんて、到底できないもん。

だからさ、深月は今まで通りでいてよ」


「……うん」


今まで通り、たくさん小説を書こう。

烈華様を愛し続けよう。


「天文部はさ、気が向いたら来てよ。
小説の気分転換とか、ネタになるかもしれないし?」


明るくそう言ってくれる優星くんは、やはりすごく優しい人で。

一瞬生じた迷いを、私は首を振って振り払った。

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