私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
「ほ、本当、すごい偶然だよね!
私が何年もやりとりしてた《ヤミノツキ》さんが、まさか私より先にお兄ちゃんと会ってたなんて!」

「あ、あはは、俺だって驚いたよ!
光峰さん、昨日は体調が悪かったみたいで、僕が教室に入るのと入れ替わりで出て行っちゃったんだ。

でも、光峰さん美人……いや、目立ってたから、印象に残ってて。
その光峰さんと、まさかこんな風に会うなんて……ねぇ?」

「…………れて」

「うん?」

「私のことは忘れてください……」


ぐったりとカフェのテーブルに体を預ける私だった。


(……終わった)


私の高校生活、終わった……。

夢小説のことはおろか、『エレアル』好きなことすら、学校では隠してきたのに。

よりにもよって転校生に、親友にすらひた隠しにしていた秘密を知られてしまうなんて……。


「み……光峰さん、大丈夫?」


おろおろと久我山くんが心配してくれるが、私は笑顔で返す気力がとても無くて。

打ちひしがれていたところに、その場の重い空気を吹き飛ばすような、元気なソプラノボイスが響いた。


「あのっ!!」


机を叩くように両手をついて、真昼ちゃんが立ち上がった。


「私……本当に《ヤミノツキ》さん……いえ、深月さんの小説が大好きなんです!!」
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