私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
私と陽菜が教室に入ると、久我山くんはクラスの男子たちと話していた。


「あれ? 久我山くん、友里(ともり)たちと仲良さげじゃん。
打ち解けるの早っ!」


陽菜が目を丸くして驚く。

友里くんたちのグループは、クラスの中でも、スポーツ系の活発な男子たちの集まりだ。
中でもサッカー部の友里くんは、明るくて面白くて、クラスのムードメーカーできる存在の男の子。

その友里くんは、今、久我山くんとゲームの話で盛り上がっているみたいだ。


「え!? 久我山もあのゲーム好きなんだ!
俺、姉貴にしごかれたから超強いぜ!」

「マジで!? 今度対戦しない? っても俺、妹相手くらいしか勝ったことないけど」

「え? 久我山妹いるんだ! お前の妹なんて、絶対可愛いだろそれ! 紹介しろよ!」

「悪い、彼氏持ち」

「だよなー……、つか、可愛いのは否定しないのな」

「兄貴なんだから、妹が可愛いのは当たり前だっつの」

「うわー……俺の姉貴も見習ってほしいわ、そのスタンス」


転校して間もないというのに、久我山くんは、すっかりクラスに溶け込んでいるようだった。


(意外……久我山くん、男の子相手だとあんな感じで話すんだ)


私や真昼ちゃんに対するそれとはまた違って、砕けた感じの話し方。


(あぁ……また、『ちょっと烈華様っぽい』とか思ってしまった……)


うっかりときめきそうになるのを、私はぐっと押さえた。


(あれは久我山くん……あれは久我山くん……。
決して、ブレザーを着た高校生烈華様などではない……)


「深月、なんで心臓押さえてるの? また体調悪い?」

「な、なんでもないよ! こういう癖!!」

「そんな癖あったっけ……?」


首を傾げる陽菜。

危ない……また陽菜に、余計な心配をかけるところだった。
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