優しくない同期の甘いささやき
彼氏できたのが家族にバレたと、メッセージを送ったからだろう。

彼の第一声は『大丈夫か?』だった。何を心配しているのか?


「騙されないようにと言われただけだよ」

『騙す? すぐ挨拶に行こうか?』

「へ? ううん、来なくていいよ」

『真剣な交際だと伝えるには、早くに顔見せたほうがいいだろ?』


意外にも真面目な熊野らしい考えではあるが、今が紹介するタイミングかどうかは悩む。

今ではないと思う。

黙り込む私を『美緒』と愛しい彼が呼んだ。

スマホ越しなのに、近くで呼ばれているような錯覚になる。


「あ、ごめん。まだ、紹介するには早いと思うんだよね」

『そうか? 明日、お父さんの誕生日なんだろ? プレゼント、俺からもなにか持っていくよ』

「んー、なんかごますりっぽくならない?」

『あー、そうだな。やめとくか。日をあらためて、会ってもらうかな。ちょっと話しておいて』


熊野はなぜか早くに挨拶をしたいらしい。彼女の親に会いたがるとは、珍しいヤツだ。

父にどう話を切り出すか迷うところだが、とりあえず明日の機嫌はよくなるようにしよう。

メッセージカードは、心を込めてを書いた。
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