優しくない同期の甘いささやき
誕生会を終えて三日経つが、父の機嫌はすこぶる良い。
今日も帰宅するなり、カバンから一冊の本を取り出した。その本には、茶色のブックカバーがかけられている。
私が父にプレゼントした物はそのブックカバーで、革製品だ。読書が趣味の父は、いつも文庫本を一冊持って出勤している。
「いやー、これ最高だよ。おしゃれですねって、今日も言われちゃったよ」
目尻を下げて、嬉しそうに毎日同じことを言っていた。普段は電車の中だけしか出していないが、ここ数日は職場のデスクにも置いているらしい。
喜んでもらえて嬉しいが、毎日同じことを言われると少々しつこさも感じる。
でも、機嫌を損ねられては困る。
この機嫌の良いときに、例のことを話せと熊野に言われているのだった。
「それね、彼と選んだの。色がいくつかあって、茶色がいいと一致したんだ」
緩んでいた父の表情が真顔に変わり、本をカバンに戻した。何も答えてくれない……。
失敗したかも。
救いを求めて、母を見た。
「一緒に選んでくれるなんて、いい彼氏ね。会ってみたいわー。ねえ、お父さん」
今日も帰宅するなり、カバンから一冊の本を取り出した。その本には、茶色のブックカバーがかけられている。
私が父にプレゼントした物はそのブックカバーで、革製品だ。読書が趣味の父は、いつも文庫本を一冊持って出勤している。
「いやー、これ最高だよ。おしゃれですねって、今日も言われちゃったよ」
目尻を下げて、嬉しそうに毎日同じことを言っていた。普段は電車の中だけしか出していないが、ここ数日は職場のデスクにも置いているらしい。
喜んでもらえて嬉しいが、毎日同じことを言われると少々しつこさも感じる。
でも、機嫌を損ねられては困る。
この機嫌の良いときに、例のことを話せと熊野に言われているのだった。
「それね、彼と選んだの。色がいくつかあって、茶色がいいと一致したんだ」
緩んでいた父の表情が真顔に変わり、本をカバンに戻した。何も答えてくれない……。
失敗したかも。
救いを求めて、母を見た。
「一緒に選んでくれるなんて、いい彼氏ね。会ってみたいわー。ねえ、お父さん」