優しくない同期の甘いささやき
ギラギラした太陽の下で、滲む汗を祥太郎はぬぐった。私はその隣で、日傘をさしている。

並んでオフィスビルに入ると、ひんやりした空気が肌に触れた。

ホッとひと息ついて、営業部のフロアまで行く。


「おはようございまーす」

「おはようございます」


私たちは同時に販売課で、朝の挨拶をした。先に出社している人たちから「おはよう」が返ってくる。

祥太郎が二人分のパソコンを持ってきた。


「ありがと」


販売課に異動した私のデスクは、祥太郎の隣だ。販売課の課長が同期で仲が良いだろうからと、気を利かせてくれた。

課長は私たちが交際しているのを知らなかったのだが、あとから誰かに聞かされた。

でも、席は変えずにこのままである。業務に支障がなければオーケーらしい。

支障は、ほぼないと思う。

まだ異動して、三日しか経っていないが。


「美緒。このファイル、目を通しておいて」

「どれ? あー、これね。了解。午後からの打ち合わね、熊野も同席してくれるんだよね?」

「おう。美緒ひとりじゃ、心配だからな。資料は吉田さんから預かってるよな?」

「うん、あるある。あれ……どこだっけ?」
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