優しくない同期の甘いささやき
どこかのファイルに入れてあるのだが、見当たらない。

どこだ?

吉田さんから引き継いだものは、思っていたよりも多かった。だから、自分なりにわかりやすく整理した。それなのに、どこだかわからなくなっている。

ダメじゃないか、私。

焦って探していると、祥太郎も探してくれた。


「おい、これだろ? 冬イベントの中に入ってる」

「あ、そうだ。このタイトルにしたんだった」


自分でタイトル名をわかりやすく変えたのに、忘れていた。

どうしようもないな、私。


「バカだな」

「バカとはなによ。忘れただけじゃん」


自分でもバカだとは思うが、人から言われると腹立たしい。

しかも、コイツ、婚約者にバカとか言った……。

ジロリと睨むと、「なんだよ」と睨み返される。


「なんでもない」

「ったく……昼には戻るから、よろしく」

「はーい」

「気の抜けた返事してないで、しっかりやれよ」


必要なものを素早くカバンに入れた祥太郎は、男性の先輩社員と出ていった。
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