優しくない同期の甘いささやき
「美緒が選んでいいよ」

「いいの? 自分が食べたいのを買ってきたんでしょ?」

「美緒が好きそうなのを買ってきた。ほら、開けてみろよ」


頬杖をついて、私を見る彼の瞳は優しい。ドキッとしながら、両方の蓋を取った。

ひとつはカニクリームコロッケ弁当、もう一つはデミグラスソースハンバーグ弁当だった。

どっちも私の好物で迷う。   

今食べたいのは、どっち?

コロッケの中、とろりとしてそう。


「コロッケの方、もらっていい?」

「いいよ。食べようか」


まずコロッケをひと口食べ、私は「美味しい」と発した。

想像通り、サクッと噛んだ瞬間にクリーミーで濃厚な味が口の中に広がった。

祥太郎の食べているハンバーグも美味しそうだ。


「そっちも美味しい?」

「ああ、美味しいよ。ほら」

「えっ?」

「早く、口開けろ」


祥太郎は、ひと口サイズにカットしたハンバーグを私の口まで持ってきた。

開けろって、言われても……。


「早く。落ちるぞ」

「うん」


口を開けると、ハンバーグが放り込まれる。もぐもぐと咀嚼した。

祥太郎がクスクス笑う。
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