優しくない同期の甘いささやき
見知らぬ誰かに見られていたかは、わからない。見てみぬふりをしているのかもしれない。

ひとりの男性と一瞬だけ目が合った。見られていたようだ……。

恥ずかしさが増して、火照っていた顔がさらに熱くなった。私は先に歩き出した。


「美緒。みーおー」

「なによ」

「なに、赤い顔して怒ってるんだよ」

「怒ってない」


また隣に並んだ祥太郎に対して、歩くスピードを緩めないで、言い返す。彼は私の手を握った。

ドキッと胸が高鳴った。

それでも、スピードは落とさない。


「顔、真っ赤だぞ」

「怒ってない。恥ずかしくなったの」

「どうして?」

「どうしてって……キスするから……」


声は徐々に小さくなった。人の多い場所で、堂々と言える言葉ではない。堂々とキスする場所でもないのに、されたから困ったのだ。

赤信号で立ち止まった。祥太郎は繋いでいる手の指を絡める。鼓動が乱れまくっている私は、横目で彼を見た。

彼は私を見ながら、絡めた手を持ち上げる。それから、自分の口もとに持っていき……なんと、私の手の甲に口づけた。

うわっ! なにするの!
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