優しくない同期の甘いささやき
慌ててグイッと手を引っ張って、祥太郎の口から離した。

反対側で信号待ちしていた大学生くらいの女性三人組が私たちを凝視していて、頬をほんのり赤らめている。 

見たくなくても、見えてしまったのだろう。

こっちだって、見せたくてしたのではない。祥太郎がどういう気持ちでしたのかは、知らないけれど。


「もう! なにするのよ。油断も隙もないんだから」

「今、美緒さ、隙があったよね」

「は?」

「だから、したんだよ」


悪びれなく言われて、頭に血がのぼった。そのとき、信号が青に変わる。私は繋がる手を振り払って、足早に横断歩道を渡った。


「ふざけないでよ」


祥太郎は「待て」と追ってきたけれど、無視する。

恥ずかしいと言ったのに、私に隙があったからしたとか意味不明だ。ふざけているとしか思えない。

何度も無視するなよと言われたが、私は部屋に着くまでひと言も喋らなかった。

洗面所で手を洗う私を祥太郎は、背後から抱きしめた。鏡には、祥太郎のしょんぼり顔が映っていた。
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