優しくない同期の甘いささやき
私たちのやり取りを訊いていた店員は、首を傾げた。


「あのう、別々のお席をご用意するので良いでしょうか?」


店員からの問いかけに熊野が答える。


「俺はひとりだけど、そっちは待ち合わせしているらしい」

「かしこまりました。では、お客様はそちらのカウンターの空いている席でよろしいでしょうか?」

「ああ、端に座るかな」


店員と熊野が話している間、私はざっと店内を見渡した。

見える席に知奈の姿はなかった。

奥の半個室にいるのかもしれない。

店員に知奈の苗字を伝えた。予約表を確認してもらっていると、出入り口のドアが開く。

店員がまた「いらっしゃいませ!」と声を張り上げた。


「あれ? 加納さんですよね?」


自分の名前を呼ばれて、入ってきた男性ふたりの顔を見る。


「あ、知奈の彼氏さん」


以前、知奈と買い物していた時に偶然出くわしたことがあった。挨拶しか交わしていないが、お互い知奈から写真を見せられていたので、誰だかすぐにわかった。
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