優しくない同期の甘いささやき
「聞いてるか? 寝てないよな?」

「起きてるよ……うん、ちゃんと聞いてた」

「で、返事は?」

「返事?あ、返事ね……うん……」


短気な熊野は「早く」と急かす。

熊野の彼女になりたいなとは思うけど、簡単に返事をしていいものなのかと迷う。


「あの、少し、考えてもいいかな?」

「少しって、どのくらい?」


私は窓を見た。動揺する自分が映っている。


「どのくらいと聞かれても」

「加納がさ、黒瀬さんを諦めるまでずっと待ってた。やっと俺を見てくれるようになった」


熊野はそこまで言って、息を吐いた。


「焦っても良い結果が得られるわけじゃないよな」

「えっ? あ、うん……」


ひとり言のように言われて、返す言葉に詰まる。


「今まで待ってたんだから、もう少し待つか。でも、いつでもいいと言ってしまうと、何か月も待たされそうだ」

「うん……」


私の性格を本人よりも熟知しているようだ。

熊野は両手をあげて、伸びをした。


「そうだな。一か月、待とう。その間、攻めるからな」

「攻める?」
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