優しくない同期の甘いささやき
翌日の夜、帰宅すると姉がいた。姉が旦那さんと暮らしているマンションは、家から電車で30分くらいの距離にある。

結婚してから一か月に一度は帰っていたが、一週間前にも帰っていたのだった。

リビングのソファーに座って、テレビを見ていた姉に話しかける。


「先週も帰ってきていたよね? 二週連続なんて、珍しいね。しかも、夜にひとりは初めてじゃない?」

「健人(けんと)が、今日から三日間の出張なのよ。昼間、友だちと遊んでからこっちに来たの」

「へー。泊まるの?」

「うん、そう」


姉の夫の健人さんは商社で働いているから、出張も多い。でも、一泊の出張ばかりだったから、三日は珍しい。

姉も結婚前までは同じ会社で働いていた。別の部署なら結婚後も勤務できたのだが、同じ会社だと働きにくいと姉が自ら退職した。

今は家でデータ入力の仕事をしている。主婦をしながらの在宅ワークは快適らしい。

母が用意してくれた料理を食べながら、山岡さんと偶然会ったことを話した。

姉は驚いて、食べていた箸を置いた。


「えっ? 山岡くんと会ったの?」

「お姉ちゃんのこと、懐かしがっていたよ」
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