500文字恋愛小説
№97 人事異動
春の人事異動。
赴任してきた課長は私の顔を見ると何故か「ふふっ」と意味深そうに笑った。

……えっと。
どなたでしょうか?
私は見覚えがないんだけど。
 
歓迎会、気が付いたら課長が隣に座ってた。
妙に馴れ馴れしく、私の世話を焼いてくる。

「あ、刺身は白身以外、ダメだよね」

「筍、ダメだっけ?
蕁麻疹出るんだよね」

「……なんで知ってるんですか?」

「んー?
というか、反対になんで覚えてないの?」

「は?」
 
レンズ越しに笑いかけられて……ん?

「お兄ちゃん、だーいすき」

「えっと?」

「大きくなったら、
お兄ちゃんのお嫁さんになるー」

「あ、あ、ああーっ!!」
 
にっこりと笑う顔に、思い出す。
……昔、隣の家に住んでたお兄ちゃん。

「で?俺のお嫁さんになってくれるの?」
 
意地悪く笑う課長に、黙るしかなかった。
< 97 / 103 >

この作品をシェア

pagetop