500文字恋愛小説
№99 コンビニ
この春から独り暮らしをはじめた。最初は張り切って自炊していたが、すぐに飽きてコンビニ弁当へ走る。

「お弁当、温めますか」

「お願いします」

しかしおじさんの店員はそのまま、動かない。

「あのー?」

「お姉さん、独り暮らしだよね」

もしかしてナンパ?とか警戒したものの。

「じゃあ、これから温めやめたほうがいいよ。
家が近所だってバレるから」

「あ……」

言われれば確かにそうだ。
しかし今まで、散々ここでお弁当を買ってきたわけで。

「あ、おじさんはそんな気ないよ。
でも、女の子の独り暮らしは気をつけたほうがいい」

赤くなり、慌てて否定するおじさんに、なんかキュンときた。

「わかりました、ありがとうございます」

わざわざ注意してくれるなんていい人だ。
ただし、左手薬指には指環が嵌まっていたが。
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