8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 フィオナの声に、ジャネットは戸惑いながらも目を閉じた。

「リーフェ、お願い」
『どうすればいいの? フィオナ』
「アイラとオリバーの力を増幅して、ジャネット様にユーイン様の声を聞かせたいの」

 しかし、リーフェは困ったように首をかしげる。

『うーん。なんかアイラのだけやるのは難しいから、みんなの力を増幅してみるね』
「え? ちょ、私の力はいいのよ。みんな凍っちゃうじゃないの!」
『えー、でももうやっちゃった!』

 すぐに周囲の空気が冷えてきた。まさにフィオナの力が勝手に暴走してしまっている。フィオナは慌てて、その場にいた全員を抱き寄せた。
 ジャネットの眠る布団に子供たちを忍び込ませ、自分はドルフを右腕で抱き、左腕側でベッドに覆いかぶさる。
 するとぐらりと世界が揺れたような気がした。周囲がくるくる回り、吐き気にも似た感覚が襲ってくる。
 それがようやく収まった頃、フィオナはおそるおそる目を開けた。

「……ここ」

 そこは、王城にある客室ではなかった。白い花がたくさん咲いている花畑だ。
 フィオナは宙に浮いていて、オリバーとアイラがしがみつくようにそばにいる。隣にはジャネットがいて、茫然と目の前の花畑を見ていた。

「ここは、ブレストン伯爵家の農園だわ」

 覚えのある、白い花。結婚してすぐ、ユーインが連れてきてくれた場所。

『すごいだろう? 君に見せたかったんだ』
『本当にきれい』

 声がして、振り向いたジャネットは、結婚当初の自分たちを見た。

「……どういうこと?」

 まるで時が戻ったかのように、ジャネットの記憶通りの光景が目の前に広がっている。

『オスニエル様のような身分も強さもないけれど、僕は君を幸せにするためにこれからの一生を使うよ』
『まあ』
『格下の伯爵家に嫁いだことを、後悔させないように』

 ユーインは昔から、家格が下であることを気にしていたようだった。

(あのときに、言えばよかったんだわ。家格なんて関係ない、私はあなたが好きですって)

『花嫁衣裳の君は、この白い花よりも、ずっときれいだった』

 しかし、当時のジャネットは、ユーインの言葉にぽうっとするばかりだった。もともと、女性のほうから気持ちを伝えるのははしたないという風潮があり、ジャネットは自分が積極的に動こうなどとは、露ほども思っていなかったのだ。
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