8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 どこかあきれたように、それでもどうしようもない我が子を見つめる視線で、正妃は言う。

「国王様のことですか?」
「私だって、諫めたことはあったわ。でも聞いてはもらえなかった。あの人は、自分の考えを正当化するのに必死だったの。それがやがて、一般的な正しさから離れていることを、認められなかったのよ」

 誰だって、最初から悪いことをしようと思ってしていたわけではないのだろう。
 現国王がこだわり続けた戦争による成長路線が、この国にもたらした富もあったはずだ。

「……肝に銘じます。私たちがそうならないとは限りませんもの」
「そう思えるなら大丈夫よ」

 正妃は穏やかに微笑んだ。なんとなく母親として尊敬できる人だと思う。

「おかあさま、おばあさま!」

 きゃっきゃとにぎやかな声をあげながら走ってくるのはアイラとオリバーだ。三歳になった双子は、大きな力の暴走もなく元気でやっている。

「きいてきいて! オリバーったら」
「んー! しー! アイラ」

 アイラは相変わらずおしゃべりが上手で歌が好きだ。人ならざる者のことは今も見えているようだが、あまり怖いとは言わない。というか、最初から見えているので、普通に兵士を見かける感覚でしか見ないのだそうだ。その存在が負の感情をあふれさせると怖いらしく、アイラが元気にしていると、おおむね城の中が平和なことがわかる。

「こんなの大事に持ってるのよ!」

 縞模様のある石だ。ごつごつしているので、自然の中からとってきたものだろう。
 動くのが好きなオリバーは、たまにドルフに乗って、いろんなところに行っているらしい。
 ドルフには危険だからやめるように言ったが、彼はオリバーには弱く、頼まれればつい行ってしまうのだそうだ。
 地質に興味があるようで、いろんな形の石を集めては、宝物だといって隠している。
 まあ、アイラにはすぐに見つかってしまうわけだが。

「この子たちの成長を見られなくなるのは寂しいわね」

 アイラを膝に乗せ、しんみりという正妃に「おばあさま、どこかに行くの?」とアイラが上を見上げて聞く。
 別れの日はきっと泣かれてしまうのだろう。フィオナは覚悟を固めた。
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