8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
  *  *  *

 公爵家の令嬢の来訪は、オスニエルから聞くより先に、侍女たちの噂話からフィオナの耳に入った。

『どうもオスニエル様の側妃候補っていう噂よ』
『あらでも、オスニエル様はフィオナ様にぞっこんじゃないの』
『国王様のご命令なのでは?』
『まあジャネット様なら仕方ないかも』

 最終的に肯定的なのが多数の意見であるところを見ると、ジャネットという令嬢はよほど人望があるのだろう。
 気になる気持ちはあるが、まだ本人を見ていないのでフィオナとしてはどうとも言いようがない。

「フィオナ様、気になさらないでください」

 励ましてくれるのはポリーだ。フィオナは、「大丈夫よ」と笑いかける。
 オスニエルから側妃を娶るという話は聞いていないし、彼の愛情も疑わしいところがないため、ポリーやシンディが心配しているほど気にしてはいないのだ。

 ただ、ロジャーが連れてきたということは賓客であることに間違いはない。
 今日の夜にでも、正妃として対応すべきことはないのか聞いてみることにしよう。

「それよりポリー、孤児院のことだけど」

 フィオナが主導ではじめた紐編みアクセサリーを使った孤児対策は、順調と言えば順調だが、停滞しているとも言えた。
 一番上手に作っていた娘は、独り立ちと共にその手の器用さを認められ服飾工房に就職した。
 就業体験は、子供たちの自信になったようで、ここ三年以内に孤児院を出た子供たちは、なにかしらの職に就いて、自立していると聞いている。

 ただ、紐編みアクセサリー自体が、少し飽きられてはいる。
 どうにか新しい商品を考えたいが、フィオナ自身も出産、子育てで体も頭もいっぱいで、なかなか余裕がなかったのだ。
 王家から支援金が出ているとはいえ、売り上げが下がれば、子供たちの自立支援金が減ることになる。

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