8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
狙われた王太子妃

『元気になったんだな』

 紐編みアクセサリーを作るフィオナを眺めながら、ドルフが言う。いま、フィオナは歓迎会用の髪飾りを作っている。黄色とオレンジと白に、金糸を混ぜた紐で作るのだ。
 王妃様用はしっとりとした雰囲気に仕上がるようにし、フィオナの分は、元気な印象になるように心掛けた。

「王妃様が、お揃いにしましょうって言ってくださったの。どうしてもジャネット様と比べられるような会だから、気を使ってくれたのね」

 イザベラ王妃がフィオナを気に入っているとなれば、女性の中での勢力図はまた変わる。

「かーたま、なにしているの」
「アイラ、これは触っちゃ駄目よ」
「どうして?」
「今度夜会で使うものなの。おばあさまにお届けしようか。アイラもオリバーも行かない?」
「お城?」
「ううん。後宮」
「なら行く」

 フィオナはポリーとシンディを呼び、双子を連れて国王の後宮へと向かう。
 風があたる外に出ると、アイラがとくにきょろきょろとし始める。

「この間からずっとこんな調子ね、アイラ」
「……なにかがずっといるんだもん」
「なにかって?」
「こういうの。怒ってるの」

 アイラは手を伸ばして人の形を描く。しかし、フィオナにはさっぱりわからない。

「オリバーは分かる?」
「え、と」

 オリバーはフィオナと手をつないだまま、もう片方の手をアイラに伸ばした。
 アイラがつないで三人が一本につながった途端に、背筋がぞくりとした。なにかの気配を感じる。実像が見えるわけでもないのに、気配だけは分かる。いるのは、城の方だ。
 恐ろしくて、オリバーの手をはじいてしまった。彼はきょとんとし、すぐにうつむいてしまう。

「ごめん、違うの。オリバーが嫌なんじゃなくて。……今の感覚が、アイラが感じて、怖がっているものなの?」
「……うん」

 オリバーが頷いた。これは、どういった能力なのだろう。説明してほしいが、オリバーはまだ言葉が上手じゃない。わかってやってはいるようだが、果たして自分の能力がどんなものか理解できているのかどうかは怪しい。
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