王子の盲愛
「よし!」
二人、並んで座り理世が課題にとりかかる。

「………」
「………」
「………」
「……うー」
「理世ちゃん、どうしたの?」

「王弥くん」
「何?」
「私のことガン見しすぎだよ……課題、しずらいよ…」

王弥は椅子ごと理世の方を向き、頬杖をついて理世を見つめていた。
「だって、理世ちゃんが可愛すぎるんだもん!」
「王弥くんも、課題しよ?」
「えー!やだ!」
「どうして?王弥くんも課題出さなきゃでしょ?」
「僕は、理世ちゃんが寝てる時にする。
できる限り、理世ちゃんから離れたくない。
意識も、視線も…」

「王弥くんは、やっぱ…真っ直ぐだ」

「そう?」
「うん、全然ぶれない」
「だって、理世ちゃんをもう…不安にさせたくない。
僕が片時も離れなかったら、理世ちゃんは不安になることないでしょ?理世ちゃんの変化がすぐわかる」
「私の…為…?」
「うん。まぁ…でも、僕自身が離れたくないってのもあるよ」
「……私、王弥くんのお荷物だね…」
理世は落ち込むように、項垂れた。

「理世…ちゃん?」
「私も、強くなりたいな……王弥くんを守れるくらいに……じゃないと、私…ほんと価値がなくなっちゃう…」
顔を覗き込んでくる王弥を見て、理世は少し切なそうに微笑んだ。

「それは…やだなぁ……」
「え?どうして?」
「僕が……全部、お世話したいから」
「え?」
「理世ちゃんが、逞しくなったら……僕は捨てられる。
そんなの、やだよ…!」
「そんなわけ……私、何があっても王弥くんから離れるつもりないよ?」
「ほんと?」
「うん!」
微笑み、大きく頷く理世。

「じゃあ……今、約束して?」

「うん!」
「僕から“何があっても”放れない?」
「うん!」
「ちゃんと、言って?」

「王弥くんから、放れない」

「ダメ」
「へ!?」
「一言、足りない」

「え?えーと……」

「“王弥くんから、何があっても放れない”
……はい、言って?」
王弥が頬を包み込み、額と額をくっつけてきた。

「王弥くん…恥ずかし……」
恥ずかしさで、もがく理世。

「ダメ…早く言って?
ほら、口唇……くっついちゃうよ?
言っとくけど、口唇…くっついたら、貪るからね?」
王弥の吐息がかかり、匂いが理世の身体を昂らせる。

「……////王弥…く…から、何があっても……放れない…よ…」

「フフ…可愛い……理世ちゃんって、ほんっと可愛い…」
「王弥くん…お願い……離れて…ほんと…恥ずかし…/////」
必死に王弥を押し返す、理世。

「わかった~
あ、でも理世ちゃん、今の言葉……忘れないでね?」
王弥は、妖しい笑顔を張りつけ言ったのだった。
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