王子の盲愛

【同窓会】

「理世ちゃん、僕はここで待ってるから!
終わったら、連絡ちょうだい!」
「うん、わかった!」
廃校になる中学の門の前で別れる、王弥と理世。

理世は小さくてを振り、中に入っていく。

「あ!理世ちゃん!!」
「え?」

「や、く、そ、く!!忘れないでね!」
振り向くと、王弥が満面の笑みで言い放った。

「大丈夫だよ!心配無用だから!」

【ほんとは行ってほしくないんだけど、最後のみたいだから特別に許可してあげる。
その代わり、約束して?
むやみに、仲良くしない。
特に“男子”
僕、嫉妬しちゃうから!
普通に話す程度にして?お願い!
僕のお願い、聞いてくれるよね?】

会場となる、体育館に入る。
沢山の卒業生が集まっていた。

理世は、真っ直ぐある人の所へ向かった。

成海(なるみ)先生」
「おっ!北城?」
「はい。お久しぶりです」
「元気そうだな!それに、綺麗になったなぁ!」

理世は中学三年の頃、いじめを受けていた。
控え目で、おとなしい理世。
今よりももっと弱かった理世を、ある女子生徒がいじめをしていたのだ。

それを親身になって、助けてくれたのがここにいる成海だった。
「あの時は、本当にありがとうございました!」
「いや、元気そうでよかった!
北城のこと、ずっと気になっていたんだ!」

成海は男勝りな女性で、言葉遣いも少々乱暴だ。
しかし、誰よりも生徒思いで理世にとって大切な恩師なのだ。

「先生、私…結婚したんですよ!」
そう言って、結婚指輪を見せた。

「えー!マジか!?」
「はい。学生結婚ってやつです!」
「そっかぁ~良かったなぁ!ほんと、良かった!」
頭をポンポンと撫でてくれた、成海。

「同窓会が終わったら、彼に会ってくれませんか?
先生には、紹介したいんです」
「うん!もちろん!」
「良かった~」
理世と成海が、微笑み合っている。

そこへ、ある女子の声が聞こえてきた。

「彼が、ヤキモチ妬きで困ってるの~」

まさに、理世をいじめていた女子生徒だ。
その声に、理世はビクッと震えだした。

「北城!?大丈夫か!?」
「は、はい…」
「私に紹介したいってことは、近くにいるんだろ?旦那」
「はい」
「じゃあ…もう、出よう!私も一緒に出るから!」

「はい…」

ゆっくり、成海に支えられながら体育館を出ようとする理世。

そこへ、信じられない言葉が出てきた。

里麻(りま)、その旦那どんな人なの?」
新道(しんどう)さん!教えてー!」

「フフ…みーんな、知ってる人だよ?」
「誰ー?」

「八神 王弥」
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