偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
キィーッ。

大きなブレーキ音の後に、私の背中をかすめるように車が横滑りし、縁石にぶつかって止まった。

一瞬のことで状況の飲み込めない私は身動きできずに固まった。


「大丈夫ですか?」
車から飛び出した男性が駆けてきて、
「すみません、大丈夫です」

勝手に車道へと倒れ込んだのは私で、おそらく車と接触もしていないと思う。
転んで道路にぶつかったせいで体の所々に痛みはあるけれど、これは交通事故によるものではない。

さすがにこのままでいるのはおかしいだろうと、私はゆっくりと体を起こしたのに、
「いいからじっとしていなさい」
車から出てきたおじさんにそっと肩を押さえられ、また道路に戻された。

「あの、本当に」
大丈夫ですから。と言おうとしたら、おじさんは携帯を取り出してどこかに電話をしている。

困ったなあ。
早くここから逃げ出したいのに。
こんなんところでもたもたしていて敬と鉢合わせなんかしたら、

えぇっ、嘘。
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