偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
ちょうど救急の込みあうタイミングだったらしく、広いはずの処置室にはたくさんの患者が運び込まれ、ベットもストレッチャーもいっぱいになった。

「あの、私は本当に大丈夫ですから」
さっきから私についてくれている男性医師に声をかけてみる。

一応患者同士はカーテンで仕切られているとはいえ、音も聞こえるしスッタフの忙しい様子もよくわかる。
こんな時に私みたいな軽症者がここにいるのは心が痛んで仕方ない。

「もう少しすればレントゲンの結果も届きますし、副院長も来ますので。もうしばらくお待ちください」
「はあ」

別に忙しいわけではないから待てと言われれば待つけれど、実はさっきから私には気になることがある。
それは敬の側を離れない女医さんのこと。
常に敬の後ろにいて、何をするにも声をかけて、ときには敬が手を添えながら指導している。
もちろんそれが敬の仕事なんだってわかっていても、面白くない。

「杉原せんせー」
「杉原先生お願いします」
ひっきりなしにかかる敬を呼ぶ声。

途中何度か私の方に来ようとした敬だったけれど、そのたびに呼ばれて戻って行った。
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