偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「どうぞ」
「ありがとう」

お兄ちゃんのマンションにやってきて、リビングに通され、温かいカフェオレを出してもらった。

きっと私がお母さんと喧嘩をして飛び出したことは耳にも入っているはず。それでもお兄ちゃんは何も言わずに私を迎え入れてくれた。

「体調が悪そうだな」
「そう?」

体調と言うよりも、精神的に不安定な感じ。
イライラして怒りっぽくて、まるで普段のお母さんみたい。

「親子って、やっぱり似るのかな?」
大き目のマグカップに入ったカフェオレを一口口にして、息をついた。

「どうだろう、確かに顔は似ているよな。真理愛もお母さんも美人だ」
「・・・」
お兄ちゃんに『美人だ』なんて言われたら返す言葉がない。

「父さんが心配していたぞ。お前本気で家を出たいの?」
「うぅーん」
どうだろう。

さっきは勢いで言ったけれど、冷静に考えてもいいチャンスだと思う。
いつかは家を出るわけだし、もう一人で生きていけないほどの子供でもないし、いつまでもおじさんの世話になるのも気が引ける。
< 139 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop