偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
高城の家を出ることに迷いがなかったわけではない。

今までずっと一緒に生きてきたお母さんと離れるのはもちろん寂しいし、おじさんにも育ててもらった恩を感じている。
何の恩返しもしないままに家を出るのは本当に親不孝だと思う。

ブブブ。
知らない番号からの着信。
きっと敬からだ。

もちろん電話出でる気はない。
今声を聞けば、私は敬から離れられなくなる。

「ごめんね、敬」
私は表示された番号からの着信を拒否した。

これでいい。
敬には敬に人生があって、そこに私が入り込むことはできない。
そう思っているのに・・・

涙が溢れ頬を伝った。

拭いても拭いても流れ出る涙は、敬への未練を洗い流してくれている気がして私は一人泣き続けた。

これでいいんだ。
敬も私も新しい人生を歩きだすんだから。
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