偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「うちの子はぐっすり眠っているし、気にしないで」

そう言われて隣の席を見ると、待合の椅子で眠っている男の子が一人。

「かわいいですね、おいくつですか?」
「1歳3ヶ月」
「へー」

敬也とは1歳違いかあ。
あと1年すると、敬也もこんなに大きくなるのね。
一人で座っていてくれるだけでどれだけ楽だろう。

「お子さんはおいくつ?」
「3ヶ月です」
「ふーん、かわいい。それに、ミルクの臭いが懐かしい」

懐かしいか。
わたしも早くそんな風に思いたい。

「このくらい小さい頃の方がいいのよ」
「え?」
驚いて声が出てしまった。

手はかかるし、寝ないし、何をするにも抱っこだし、自分の時間なんて一つもないのに。

「歩くようになれば目が離せないし、自分の思い通りに行かないとすぐに怒りだしすし、親はへとへとよ」
「へー」
そうなんだ。

「でも、先輩たちに聞くと今が幸せなんですって。そのうち反抗期に突入して『死ねクソババア』なんて言われるかもしれないし、もっと大きくなれば一人で大きくなったような顔をして親なんて見向きもしなくなるでしょ。だから今が一番かわいいんですって」
「ふーん」
子育てって難しいのね。

「オイッ、環」
突然、廊下の先に白衣の男性が現れた。

あれ、あの人・・・
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