偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
次に目が覚めたのは自宅にある自分の部屋。

ベットと机と小さなソファーと、窓際にはママの趣味で買ったテディーベア。
私はぬいぐるみが好きではないけれど、なぜか捨てられなくて結構な数になっている。

うぅーん。
布団の中で伸びをしようとして、
「痛っ」
腕の痛みで動きが止まった。

ん?

いつの間にか右手につながれた点滴。
きっと病院から持ってきたんだろう点滴スタンドがベットの横で存在感を出している。

点滴かあ。嫌いなんだよね。
痛みがある訳じゃないんだから我慢しなさいっておじさんは言うけれど、自分の体に針が刺さったままって言うのが気持ち悪い。

「動いたら漏れるからね、じっとしていなさい」
部屋に入ってきたおじさんに言われ、私は唇を尖らせた。

点滴なんてしなくても寝ていれば治るのに、内服よりも早いからっておじさんは点滴をしたがる。
私がどんなに抵抗したって、治療に関しては絶対に妥協してくれないんだから。

「真理愛、野菜スープを作ったから飲みなさい」
「ぅん」

ゆっくりと起き上がり、ママが持ってきたスープを膝の上に置いた。
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