あやかし戦記 千年前の涙

食事をする際、会話をするのは主にアサギとツヤ、そしてカスミだ。ミツヒデは幽霊のように黙り込み、黙々とご飯を口に入れる。そして時おり、茶碗や味噌汁の入っていたお椀をアサギに渡し、「入れてくれないか？」と小声で頼む。そのような態度がツヤにとって不愉快だった。

「お父さん、私が入れるわ。お母さんに毎回入れてもらってるから……」

カスミが毎回動かなくてはならないアサギを気にし、空になったミツヒデの茶碗を受け取ろうとする。だがミツヒデはそれを無視し、アサギが入れてくれないなら仕方ないと言わんばかりに気怠そうに立ち上がり、台所へと歩いて行く。

「……姉さんを無視してんじゃねえよ。このクズ野郎が」

怒りが抑えきれなくなり、小声でツヤは悪口を呟く。本当は大声で言いたいが、楽しそうに話すアサギとカスミの顔を曇らせたくないのでそこは堪えた。

「ねえ、お母さん。今日は休日で寺子屋は休みよ。だから稽古に付き合ってくれない？もちろん、家事は手伝うわ」

「稽古をするのはいいけど、きちんと寺子屋で学んだことの復習をするのよ？」