メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

灯里の村は、大粒の栗を埋め込んだブラウニーを新たな名物とすることが決まった。新次郎が村の婦人部の人に作り方を教え、最初は数限定のネット注文で売り出すことが決まっている。

新次郎が経営する『カフェ・ド・イリス』というスイーツ店はかなり有名な店で、マスコミからも注目されている。新次郎が宣伝も協力してくれると言ってくれているので、まずはそこを足掛かりとしていきたい。

安西は新次郎と共に何度か村を訪れた。今では灯里の祖父母が、本当の孫のように接してくれている。

安西と灯里は会ったこともないのに、灯里は安西の家族に可愛がられ、安西は灯里の祖父母に孫のように大切にされる。

これは一体どういう事態なのだ。

意外な方向に事が進んでしまい、安西は戸惑っていた。

一旦整理が必要だ。
灯里には九州、沖縄の順に行ってもらう予定だ。物理的に距離を取って関係を立て直そうと思う。

亜里沙との関係は、ずいぶん前に終わらせた。
ホテルに置き去りにしたことをさすがに反省し、もう無理だと思ったのだ。この先、灯里のことをないことにして、つき合うことはできない。
もうプライベートでは会わないと伝えたところ、亜里沙は驚いて、「そう」と言ったきり黙ってしまった。もっとあっけらかんと「わかったわ。じゃあね」と言われると思ったので驚いた。でも、その後何も言ってこないので、受け入れてもらえているのだろう。

もう女性とのつきあいはいらない気がする。

「仏門に入ろうかな」ボソッと呟くと、「なんだ、突然」と今西に呆れられた。


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