追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
なりそこない
ここは砂漠の国ロストブ。

セントアグニス教の聖地に建つ石壁の聖堂では、“覚醒の儀”の真っ最中。

祭壇に立つのは十八歳になったばかりの清廉な乙女で、名をモニカ・メルネスという。

ゆったりと波打つブロンドの長い髪にマリンブルーの瞳を持つ美しきモニカ。

この日のためにあつらえた純白のシルクのローブが冷や汗で湿っていく。

モニカが顔面蒼白になっている理由は、たった今、国王ルビウス三世から国外追放を言い渡されたからだ。

これまでモニカに優しかった教会幹部らも冷たい視線を向けていて、儀式に招待された隣国の賓客たちは呆れ顔をしている。

(国外追放って、私はこれからどうやって生きていけばいいの?)

モニカは崩れるように膝をついた。

華奢な体を震わせ、目には涙が浮かぶ。

その時、クックと笑う場違いな声が響いた。

椅子を立ったのは隣国の皇帝、シュナイザー・クリフト・ベーベルシュタム。

「それでしたら、その乙女を我が国がもらいましょう。私の妻として」

二十二歳の若く見目麗しい皇帝が祭壇を上ってモニカの前に立つ。

(今、妻って言った……?)

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