追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
目を丸くしたモニカは信じられない思いで彼を見つめたのであった――。



時を遡ること数時間前。

ロストブの王都を出発したモニカは、小一時間ラクダの背に揺られて小さなオアシスに到着した。

こんこんと湧く泉と豊かなナツメヤシの林があっても、ここに人は住めない。

セントアグニス教の神聖なる聖地であるからだ。

そこに石壁の聖堂がポツンと建っていて、聖職者だけが管理のために常駐している。

いつもは静かなこの場所に、今日は多くの人が出入りしていた。

モニカの乗ったラクダが聖堂前で足を止めた。

従者がラクダを座らせる前に、モニカが背からピョンと飛び降りる。

「危ないです!」と心配されたが、「平気よ」とモニカは笑った。

小柄で細身なので着地の衝撃は少ない。

モニカがマスク付きのフードを外しマントについた砂を払っていると、建物から教会関係者たちが慌てて出てくる。

「モニカ様のご到着だぞ」

「急いでお迎えするんだ」

モニカよりかなり年上の男性たちが二十人ほど入り口前に整列したので、モニカは呆気にとられる。

(今日からは“様”がつくの? 聖女の待遇って別格なのね)

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