追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
(ひっ、怒らせちゃった?)

顔を守るように両手を上げれば、手首を掴まれた。

強い力で引っ張り立たされ、片腕で抱き寄せられる。

黒っぽい軍服から香るのは、甘い白檀の香り。

細身だが逞しい筋肉の質感が布越しに伝わってきて、モニカは激しく動揺した。

(ち、近すぎるわよ!)

年頃になって男性に抱きしめられた経験がないわけではないが、導師や年配の聖職者ばかり。

恋も知らずに十八になったモニカには、強すぎる刺激であった。

慌てて逃げようとしたら、彼の腕が首にずらされさらに強く引き寄せられる。

(うっ、首を絞める気!?)

ジタバタもがくモニカに構わず、シュナイザーがルビウス三世と話しだす。

「このまま連れ帰ってもよろしいですか?」

「あ、ああ。我々としても助かります。役立たずでよければぜひ」

(そんな言い方ひどい。私だって聖女の務めを果たしたかったのに)

聖女になりそこないの役立たずは、冷酷非道の男にくれてやっても構わないらしい。

さらにはこんな要求まで。

「いやしかし、モニカを連れて行くなら代金はお支払いくだされ。ここまで育てるのに経費がかかっておりますのでな」

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