追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
(知ってるわ。幼い頃から聞かされて耳タコよ。導師様から教えられるのも十二回目だけど忘れたの?)

この聖堂を訪れたのも五度目であり、フレスコ画に新鮮味もない。
けれども導師相手に不敬な物言いはできず、モニカは作り笑顔で聞いていた。

アグニス歴元年とは今から三千年ほど前のことで、大災厄とは巨大竜巻のことだ。

国土の三分の二を占める砂漠地帯で発生する巨大竜巻は、ロストブ全土を飲み込み隣国の一部まで破壊して全てを砂に埋めてしまうらしい。

初代聖女のアグニスは雨を降らせて竜巻を鎮めた。

その後は大地に緑が芽吹き、この地に生きる人々に長らく実りの恵みを与えたという。

アグニスは“精霊憑き”なのだ。

この国では時々魔力を持った子供が生まれる。

水の精霊憑きは水を操り、風の精霊憑きは風を吹かせ、火の精霊憑きは燃やす力がある。

精霊憑きは珍しい存在だが、中でも水の精霊憑きは稀有な存在。

生きている者の中では、今のところモニカしか見つかっていない。

「モニカよ」

導師がモニカと向かい合ってその両肩を掴んだ。

「そなたが頼りだ。聖女となり大災厄から我々を救ってくれ」

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