追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
正式にはまだ聖女ではない。

これから覚醒の儀が行われ、それをもってモニカは聖女となる。

覚醒の儀とは、モニカの中に眠る聖女の力を目覚めさせるという儀式だ。

「おおモニカ、待っておったぞ」

ワインレッドのローブを纏い、先の尖った帽子をかぶった老爺は導師。

セントアグニス教の最高指導者である導師にまで出迎えられ、モニカは居心地の悪さを覚える。

「導師様、普通に接してください。その方が私は楽なんです」

「なにを言う。そなたはこの国、いや世界を救う聖女だ。敬われて当然だろう」

導師がモニカの背に手を添えて聖堂内へといざなう。

「見なさい」

導師が指をさしたのはドーム型天井でフレスコ画が描かれていた。

水・風・火を司る三体の精霊と輝くロッドを手にした女性が天井を飾っている。

いにしえからの精霊信仰に聖女信仰が加わったのがセントアグニス教だ。

「あの絵の女性は初代聖女アグニス様だ。『アグニス歴元年、大災厄が大地を飲み込まんとせし時、水の精霊に愛されし巫女、豪雨を三日三晩降らせて鎮めたまう』。最古の歴史書に書かれているこの話をモニカにしてやろう。アグニス様はな――」

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