契約結婚のススメ
 ハウスキーパーさんは夜帰ってしまうし。

「今日はお父さまの月命日だものね」

「うん」

 母が紅茶の準備をして、私は買ってきたブランデーケーキをお皿に盛り付ける。

「珍しいわね。陽菜がブランデーケーキを買うなんて」

「前にね、頂き物でもらったの。とってもおいしかったから」

 本当は渡すだけで自分は食べるつもりじゃなかった。そのために日持ちのするケーキにしたのだけれど。なんとなく、これをひとりで食べる義母を想像するのは辛いから。

「おじいさまはどう?」

「うん。大丈夫、良くなっているみたい」

 しっとりとブランデーが染み込んだケーキはほろ苦く大人の味がする。

「陽菜。この家なんだけれど……」

 やっぱり、家を引き渡す話がでているのね。

「叔父さんたちが入るんだよね。引っ越しは、いつ頃?」

「それがね、自分の家があるからいいって」

 義母は苦笑を浮かべている。

 どういうことなのか。

「もしかして、叔父さんたちはこの家に入りたくないの?」

「うーん」

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