契約結婚のススメ
 相続人は義母と私だから、私の分も含めてきれいにしてくれたのだ。

「そうだったの」

「大きくは一貴さんからの融資で清算できているのよ」

「結納金だけで?」

 違うわよと義母は笑う。

「一貴さんはね、今後は自分も枇杷亭を支えたいって資金提供をして役員にもなってくれたの」

「そうなの?」

 知らなかった。

 枇杷亭は銀座店も含めると従業員は百人を超えるそれなりの企業でもある。その組織の中に一貴さんが名を連ねるとなればかなり心強いだろう。

「結納金は陽菜にそっくり渡すわよ。遺産を全部整理したら一緒にね」

「おかあさん、色々ありがとう」

 いったい義母はどれだけ身銭を切ったんだろう。叔父の協力がないとなると相当な額だったはずだ。

「でも、本当だったらこの家は借金も含めて叔父さんたちが相続するんじゃないの?」

 義母は苦笑する。

 この家は枇杷亭とセットのようなものだ。切り離して考えられないというか、叔父がそんなふうに言い出すなんて、予想もしなかった。

< 126 / 203 >

この作品をシェア

pagetop